代表取締役 CEO 朴秀明

3Dプリンターと3Dスキャナーは、モノづくりの仕組みそのものを変えました。特に製造業では、これまで新しい製品を商品化するまでに、設計、試作、金型製作、検証、量産準備など多くの工程が必要で、どうしても多くの時間とコストがかかるという課題がありました。しかし、3Dプリンターを導入することで、設計したデータをすぐに形にし、試作と改良を繰り返すことができるようになりました。さらに3Dスキャナーを活用すれば、現実に存在するモノを短時間でデジタルデータ化し、設計や改良、リバースエンジニアリングへつなげることができます。これにより、商品化までのスピードは大幅に速くなり、開発コストについても、従来と比較して1/10以下まで抑えられるケースが生まれています。

そして今、私たちはさらに大きな変化の入口に立っています。それがAIモデリングです。これまで3Dプリンターを使うためには、CADや3Dモデリングに関する専門的な知識や技術が必要でした。しかしAI技術の進化によって、文章や画像、スキャンしたデータなどから3Dモデルを生成することが可能になり始めています。つまり、3Dスキャナーで現実世界をデータ化し、AIでデータを生成・編集し、3Dプリンターで再び現実世界に出力する。この一連の流れが、急速につながり始めています。今後AIモデリング技術がさらに進化すれば、専門的な設計技術を持っていない人でも、自分のアイデアを短時間で3Dデータにし、それをそのまま製品として形にできる時代がやってきます。私たちは、これによって3Dプリンター市場そのものが急速に成長していくと考えています。

一方、日本ではまだ3Dプリンターや3Dスキャナーの普及が十分に進んでおらず、世界と比較して遅れを取っていると感じています。私は、これは大変由々しき事態だと捉えています。なぜなら、これから3Dプリンター、3Dスキャナー、AIモデリングは、一部の製造業だけが使用する専門的な技術ではなく、あらゆる業種のモノづくりを支える基盤技術になっていくと考えているからです。つまり、これらの技術の普及や活用が遅れるということは、製品開発だけでなく、製造、物流、在庫、サービス、そして新しいビジネスの創出においても、日本が世界に遅れを取る可能性があるということです。

だからこそ、私たちは安くて品質に優れたパーソナル3Dプリンターや3Dスキャナーを普及させ、より多くの人がモノづくりに参加できる環境をつくりたいと考えています。そして、私たちが目指しているのは、3Dプリンターや3Dスキャナーを「販売すること」だけではありません。APPLE TREEでは現在、「DeepMaker」という新しいモノづくり事業にも取り組んでいます。DeepMakerが目指しているのは、デジタルデータと3Dプリンターを活用した次世代のモノづくりインフラです。

従来の製造業では、大規模な工場に設備を集約し、大量生産した製品を各地域へ輸送するという仕組みが一般的でした。しかし3Dプリンターであれば、製造データを送り、必要な場所で、必要なものを、必要な数だけ生産することができます。大量生産だけではなく、多品種少量生産、オンデマンド生産、カスタマイズ生産にも対応できます。さらに、生産設備を一つの巨大工場に集中させるのではなく、各地域に配置された3Dプリンターをデジタルデータによってつなぐことで、分散型のモノづくりを実現することも可能になります。DeepMakerでは、こうした3Dプリンターの特性を生かし、設計、試作、検証から量産までをつなげることで、これまでの「一極集中型の製造」から、より柔軟な分散型製造への転換を進めていきたいと考えています。

将来的には、日本各地に製造拠点が存在し、データさえあれば、必要なものを最も適した場所で生産できる。大量の在庫を持つ必要もなく、遠くの工場から製品を運ぶ必要もない。企業だけでなく、中小企業、クリエイター、デザイナー、そして個人までが、自分たちのアイデアをすぐに形にできる。3Dスキャナーが現実をデータに変え、AIがアイデアを3Dデータに変え、3Dプリンターがそのデータを再びモノに変える。私たちは、そんな「データからモノが生まれる社会」を実現したいと考えています。

そのためにAPPLE TREEは、「一家に一台3Dプリンターを普及させる」という目標を掲げています。家庭や企業へパーソナル3Dプリンターと3Dスキャナーを普及させること。AIモデリングによって、誰でも簡単に3Dデータをつくれる環境を整えること。そしてDeepMakerによって、その先にある高度な製品開発、多品種少量生産、そして量産までを支えること。この三つをつなぐことで、3Dプリンターを単なる製造装置ではなく、社会を支える次世代のモノづくりインフラへ成長させていきたいと考えています。

私たちの活動は、まだ始まったばかりです。しかし、この技術が製造業だけでなく、医療、建築、教育、ファッション、日用品、ロボットなど、あらゆる業界へ広がっていけば、日本のモノづくりはもっと速く、もっと自由に、そしてもっと強くなると確信しています。APPLE TREEは、少しでも多くの人に3Dプリンター、3Dスキャナー、そしてAIがもたらす新しいモノづくりの可能性を知っていただき、日本の次世代のモノづくりを支える存在になれるよう、これからも挑戦を続けていきます。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。